債務整理

個人再生で住宅を残したい!住宅ローン特則とは?

「自己破産をすると持ち家を失う」「個人再生をすれば持ち家を残せる」
借金の整理を考えている方の中には、こういったことをどこかで見聞きしたという方も多いようです。

そこで、ここでは主に以下のことについて解説していきます。

  • 個人再生をすれば本当に持ち家を手元に残せるのか?
  • どうすれば個人再生で持ち家を残せるのか?
  • そもそも個人再生をするための条件はあるのか?
  • 個人再生以外に持ち家を残す方法はないのか?

個人再生を検討している方や、持ち家をどうしても手元に残したい方は、本記事を読んでぜひ参考にしてください。

1.個人再生なら持ち家を残せる

個人再生は法的整理という意味では自己破産と同じですが、自己破産とは違い、一定程度の財産は所有し続けることができる債務整理です。
しかし、たとえ個人再生においても、借金をして購入し、まだ支払いを続けているものについては例外的に手放さざるを得なくなる可能性があります。

例えば、自動車ローンを支払い中の車です。

自動車ローンを組むときには「所有権を留保」したままローン契約をすることが通常です。
ローンを支払い中の車は、ローンを支払っている債務者が自由に乗ることができますが、車の所有権自体はローンの債権者にあります。

もし債務者がローン支払えなくなって債務整理を行った場合、債権者は所有者としての権利を行使して車を引き揚げ、売却して債権の回収を図ります。

さて、次に住宅について考えてみましょう。住宅ローンを組むときは住宅に抵当権が設定されるのが通常です。
上記の自動車の例と同様に考えると、もし債務者が住宅ローンを支払えなくなり住宅ローンという「債務」について債務整理を行った場合には、住宅ローンの債権者は抵当権に基づいて住宅を売却し、債権の回収を図ります。

この際の方法としては主として、住宅の所有者の同意を得た上で住宅を売却するいわゆる「任意売却」、住宅の所有者の同意が得られない場合には強制的に抵当権を実行するいわゆる「競売」があります。

自己破産の場合には、これらの処理を破産申立人の財産を管理する破産管財人が行う場合もあります。

このように、住宅ローンについて債務整理をすると原則として住宅ローン支払い中の持ち家は処分することになります。

しかしながら、個人再生には「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という制度があり、これを利用すれば持ち家を残すことができるのです。

このような制度が設けられている趣旨は、過大な債務を負ってしまったとはいえ住宅ローン及びその他の債務については圧縮すれば返済は可能であるという方のために、生活の本拠であるマイホームを維持した状態で生活の立て直しを図るという点にあります。

2.住宅ローン特則(住宅資金特別条項)とは?

個人再生における住宅ローン特則の効果は「住宅ローンのみは基本、住宅ローンの返済計画どおりに支払いを継続し、その他の住宅ローン以外の債務は減額する」というものです。

つまり以下の2点に注意が必要となります。

  • 住宅ローン自体は減額されない
  • 住宅ローンは支払い続けなければならない

例えば住宅ローンが500万円、その他の借金が1,000万円ある場合、住宅ローンの500万円はそのままで1,000万円の部分のみが個人再生によって減額されます。

このため、住宅ローン以外の借金がない人にとってはメリットが少ない制度であるともいえるでしょう。

住宅ローンの支払いについては支払期間のリスケジュール等が可能なことがありますが、とにかく住宅ローンが消えてなくなるわけではないため、普通の個人再生よりも支払額が大きくなることを理解しておきましょう。

【住宅ローン特則の仕組み】
住宅ローン支払中の持ち家を残せるのは、債務者の救済以外にもいくつかの理由があります。
まず、法的な債務整理には「債権者平等の原則」というものがあり、すべての債権者は平等に扱われるという前提で手続が進みます。「この債権者にだけは迷惑をかけたくないから、この借金だけは返済しておこう」というえこひいきは許されないのです。
しかし、住宅ローンについては抵当権がある関係で、住宅ローンの債権者は優先的に弁済を受けられます。住宅ローンの債権者は抵当権を実行して家を売却すれば債権の回収を図ることができるからです。
また、住宅ローンは実質的に家賃のようなものとも考えられます。家賃は生活に必要な支出であるとされているため、これを支払うことには特定の債権者に対してえこひいきにはならないとされているのが通例です。
以上のように「債権者平等の原則」の観点から問題がないのであれば持ち家を残して債務者の経済的再生の手助けをすることは許容され、かつ、債務者の経済的再生に資する場合があるという考え方から、住宅ローンについては「住宅ローン特則」を使うことによって競売等による処分を免れるようになっているのです。

3.住宅ローン特則を使うための条件

住宅ローン特則を使うには、以下の条件を満たしていなければなりません。

(1) 個人再生できる条件を満たしている

そもそも個人再生の条件を満たしていなければ、個人再生に付随して行う住宅ローン特則は利用できません。

小規模個人再生か給与所得者再生の両方、あるいはどちらか一方ができる条件を満たしている必要があります。

(2) 住宅ローンを支払い続けられる継続的な収入がある

住宅ローン特則は「住宅ローンを支払い続けることで持ち家を手放さなくて済む」制度です。

住宅ローンを支払い続けられないような人は利用することができません。

(3) ローンの目的が建物の購入やリフォームである

住宅ローン特則はその名の通り住宅に関するローンが対象です。
教育ローンや事業のための借金等は対象外です。

(4) 債務者自身が所有して居住している建物である

債務者とは別の人が所有している建物や、債務者が所有していても居住していない別荘、あるいは賃貸物件等は住宅ローン特則の対象外です。

(5) 住居部分の床面積の2分の1以上を債務者が利用している

住居兼店舗のような建物で住居部分が狭い場合は、住宅ローン特則が使えない可能性があります。

(6) 対象となる建物に抵当権が設定されている

対象となる建物に抵当権が設定されていなければ住宅ローン特則を使えません。

(7) 住宅ローン以外の抵当権が建物に設定されていない

抵当権は1つの不動産に対して複数設定することができますが、住宅ローン以外の抵当権が設定されている建物は住宅ローン特則の対象外となってしまいます。

事業のため等の理由で例えば「不動産担保ローン」など、住宅を担保にお金を借りている人は注意してください。

(8) 住宅が滞納処分による差し押さえがされていない

差し押さえを受けている住宅は、住宅ローン特則の利用することが困難です。

例えば固定資産税等の税金を滞納していると差し押さえを受けることがあります。こういった税金は速やかに支払ってください。

(9) 保証会社が返済を肩代わりしてから6ヶ月未満

債務者本人が住宅ローンを支払えなくなった場合、保証会社が代わりに返済をすることがあります。

この場合は保証会社の返済から6ヶ月以上経つと住宅ローン特則が利用できなくなります。

4.住宅ローン特則は複雑!弁護士に相談が必須です

個人再生は、債務整理の方法の中でも手続が複雑なものです。加えて住宅ローン特則を使おうとなると、さらに複雑性が増大します。

例えばせっかく申立てをしても裁判所の認可が出なかったなどという失敗をしないためには、専門家に相談するのが一番です。
万が一住宅ローン特則を使えない場合でも、債務整理に精通した弁護士ならば代わりの解決策の提案が可能です。

ぜひ、泉総合法律事務所の弁護士に相談して、借金問題を一緒に解決しましょう。

無料相談受付中! Tel: 0120-701-271 平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:30
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