交通事故

交通事故で足が動きにくくなったときの損害賠償請求|下肢の機能障害

交通事故で足の関節が動きにくくなり、後遺症として残ってしまったときは、「股関節・ひざ関節・足首がどの程度動かなくなったかを示す「関節の可動域制限」の角度」「人工関節などの利用の有無」などが、後遺障害の等級の基準となっています。

ここでは、下肢の機能障害における基本や可動域の測定方法を紹介したうえで、機能障害の内容ごとに等級基準や目安となる賠償金額を説明します。

1.下肢機能障害と後遺障害の基本

股関節、ひざ関節、足関節(足首の関節)を「下肢の三大関節」と呼び、この三大関節が事故以前のように動かせなくなることを下肢の機能障害といいます。

(1) 認定の条件

交通事故の後遺症について損害賠償請求するには、後遺障害に該当すると認定を受けることがほぼ必須です。

下肢の機能障害で後遺障害と認定を受けるための条件は、以下の2つです。

  1. 骨折等の器質的損傷が確認されること
  2. 症状固定時に機能障害の原因が確認できること

1の「器質的損傷」とは、骨折や靭帯断裂など肉体の損傷を指します。

これが確認されるには、事故後できる限り早くに画像検査をして証拠に残してください。

たいていは救急搬送先の病院でレントゲンやCT検査を受けているでしょうが、靭帯損傷のケースでは骨以外の確認もできるMRI検査が大切になります。

事故から時間が経過してから画像検査で異常が見つかっても、事故以外の原因でケガをしたのではないかと疑われてしまうおそれがあります。

一貫して同じ症状を訴え、その症状がのちの画像検査で見つかった異常と噛み合っているときは、認定を受けられる可能性があります。

2について、それ以上症状が回復しなくなった「症状固定」の時に、機能障害の原因、たとえば、「骨折後の癒合不良」「関節周辺組織の異常」「神経マヒ」などが確認できることも必要となります。

ここでも、それぞれの原因に応じた検査で異常が検出されていることを証明することになります。

(2) 等級と損害賠償金

後遺障害と認定された場合に請求できる損害賠償金としては、人工関節の更新費用や介護費用、バリアフリー化のための家屋修繕費などもありますが、特に大きな割合を占めるものが、後遺障害慰謝料逸失利益です。

この二つの損害賠償金は、後遺障害認定の際に同時に認定される等級によりその金額などの目安が決まっています。

等級は、症状の重さなどにより区別されており、制度上、基準が決まっています。

下肢の機能障害では関節がどれだけ動かなくなってしまったかを示す「関節の可動域制限」が症状の重さの指針として重要な役割を果たします。

関節の可動域制限は、実際の測定方法次第でズレが生じてしまいやすく、医師でも正確に測っていないことがあるため、本当に注意が必要なのです。

測定前に弁護士に相談して助言を受けておきましょう。

さらに、認定後の保険会社との示談交渉の中で争いが生じることもあります。

しばしば問題になる点が逸失利益です。
逸失利益は、後遺症の悪影響で将来手に入るはずだったのに手に入らなくなったお金を一括払いさせ埋め合わせるものです。

もともと、逸失利益は将来の損害を推定するものですからあいまいなところがあります。
そのうえ、下肢の機能障害では、現実に仕事に悪影響が生じていないと言われやすいのです。

逸失利益を計算するうえでは、お金を稼ぐ能力が障害で低下した程度を示す割合を数値にした「労働能力喪失率」が大きな役割を果たします。

労働能力喪失率は等級に応じて目安が決まっていますが、下肢の機能障害だと、被害者様の個別の事情次第で任意保険会社に労働能力喪失率を低く見積もられてしまうおそれがあるのです。

たとえば、デスクワーク主体で働いている場合、事故後に収入が減少していないこともあるでしょう。

そのようなときは将来の昇進や転職への悪影響のリスクを具体的にこれまでの職歴などから主張する必要があります。

2.可動域の測定方法

関節の可動域を測定する際には、ケガをしていない足(健側)とケガをしている足(患側)、両方の「主要運動」の可動域を測定し比べることが原則となっています。

主要運動とは、関節が持つ複数の動きの中でも、それぞれの関節で大きな役割を果たすものです。

両足をケガしている場合は、下記の参考可動域を利用します。 

関節

主要運動

参考可動域角度

股関節

 

屈曲・伸展

125度・15度(合計140度)

外転・内転

45度・20度(合計65度)

ひざ関節

屈曲・伸展

130度・0度(合計130度)

足関節

屈曲(底屈)・伸展(背屈)

45度・20度(合計65度)

ひざ関節と足関節は折り曲げる方向の「屈曲」と伸ばす方向の「伸展」をまとめます。

一方、股関節では屈曲・伸展と外転・内転、両方とも基準以上の可動域制限がなければ認定を受けられないケースもあります。

股関節は「参考運動」を測ることもあります。
参考運動とは、主要運動の可動域が基準にわずかに達していないときに参考とするための補助的な関節の動きです。

股関節の参考運動は、外旋・内旋で、参考可動域角度は45度・45度の合計90度となっています。

股関節の主要運動の可動域が1/2 以内及び3/4以内、この2つの基準からわずかに(10度以内)外れていたとしても、参考運動である外旋・内旋の可動域が上記の基準以下であれば、それぞれに対応する等級に認定されます。

3.関節が動かなくなったケースについて

(1) 股・ひざ・足首、3つすべての関節が完全にまたはほとんど動かなくなったとき

 

等級

自賠責基準の後遺障害慰謝料

弁護士基準の後遺障害慰謝料

労働能力喪失率

両足

1級

1150万円

2800万円

100%

片足

5級

618万円

1400万円

79%

基準では「下肢の用を全廃」したときに1級または5級となるとされています。

下肢の用を全廃するとは3大関節のすべてが強直した場合をいいます。

「強直」とされるのは、関節が全く動かなくなったケース・関節可動域が、ケガをしていない足の関節可動域角度の「10%程度」以下に制限されているケース・関節可動域が「10度」以下に制限されているケースなどです。

なお、足の指も強直しているかどうかは問いません。

(2) 股・ひざ・足首のうち2つまたは1つの関節が完全にまたはほとんど動かなくなったとき

 

等級

自賠責基準の後遺障害慰謝料

弁護士基準の後遺障害慰謝料

労働能力喪失率

2つ

6級

512万円

1180万円

67%

1つ

8級

331万円

830万円

45%

基準では1下肢の3大関節の「関節の用を廃したとき」、2つなら5級、1つなら8級となります。

関節の用を廃したときとは、「関節が強直したもの」「関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの」「人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」の3つを言います。

なお、ここでは股関節は二つの主要運動、いずれも全く可動しないまたはこれに近い状態になることが必要です。片方だけでは該当しません。

(3) 股・ひざ・足首のうち1つの関節がある程度動かなくなったとき

関節の用を廃したと言えなくても、ある程度関節に支障が生じているケースでは、その可動域制限の程度により等級が決まります。

可動域制限

等級

自賠責基準の後遺障害慰謝料

弁護士基準の後遺障害慰謝料

労働能力喪失率

1/2以下

10級

190万円

550万円

27%

3/4以下

12級

94万円

290万円

14%

可動域制限が1/2以下のとき、「関節の機能に著しい障害を残す」として10級に、4分の3以下のときは12級に認定されます。

なお、こちらでは股関節の主要運動二つのうち、片方だけが基準を満たしていても認定を受けられます。また、ここでいう著しい障害には、人工関節、人工骨頭を挿入置換した関節のうち、「関節の用を廃したもの」以外のものも含まれます。

人工関節について、項目を改めて説明しましょう。

4.人工関節・人口骨頭を入れているケースについて

手術をして人工関節や人工骨頭を挿入置換した場合でも、事故以前のように関節を動かすことができなければ、後遺障害等級認定を受け損害賠償請求できる可能性があります。

可動域制限の程度

等級

自賠責基準の後遺障害慰謝料

弁護士基準の後遺障害慰謝料

労働能力喪失率

1/2以下

8級

331万円

830万円

45%

1/2以下ではない

10級

190万円

550万円

27%

人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているものならば関節の用を廃したとして8級、関節の用を廃したとは言えないものについては著しい機能障害として10級とされています。

もっとも、現在人工関節などの技術は発展しており、可動域が2分の1以下ということはまずありえませんので、実際には、10級の著しい機能障害となることがほとんどです。

5.動揺関節などについて

動揺関節とは、骨折による関節の回復不調・靱帯断裂などの「器質的」つまり肉体的な損傷が原因で関節が安定しなくなり、通常ならありえない方向に動くようになってしまったり、ぐらついたりするようになってしまった関節のことです

「硬性補装具」、プラスチックや金属製の器具を用いなければ生活に支障が生じるケースでは後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。

等級は、基準の上では日常生活の中で硬性補装具を必要とする頻度に応じて決まっています。

硬性補装具を必要とする頻度

等級

自賠責基準の後遺障害慰謝料

弁護士基準の後遺障害慰謝料

労働能力喪失率

常に

8級

331万円

830万円

45%

時々

10級

190万円

550万円

27%

重激な労働等の際のみ

12級

94万円

290万円

14%

実際の認定手続では、原因に応じた多くの検査をしてその結果が重視されます。

なお、習慣性脱臼(外部から軽い力を受けるだけで簡単に脱臼してしまう状態になっているケース)、弾発ひざ(ひざ関節を伸ばすと、急にばねのように飛び跳ねてしまうケース)については、12級に認定される可能性があります。

6.まとめ

下肢の機能障害では後遺障害等級認定申請前に弁護士に相談し、適切な可動域の測定方法について助言を受けることがまず重要なポイントとなります。

認定後の示談交渉でも、保険会社が逸失利益を減らそうとしてくることは珍しくありません。中には、逸失利益をそもそも認定していないこともあります。

弁護士に依頼すれば、損害賠償金の相場を上げて金額を増額できる可能性があるだけでなく、労働能力喪失率について適切な反論をして、妥当な金額で和解できるよう保険会社と交渉します。

泉総合法律事務所は、これまで多数の交通事故被害者の方の損害賠償請求をお手伝いしてまいりました。
下肢の機能障害で損害賠償請求をご検討の方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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