未成年との児童買春における同意の有無と犯罪の成立
未成年と援助交際をしたら、たとえ相手の同意があっても犯罪になります。
対価としてお金を渡したら「児童買春罪」が成立しますし、金品を渡さなくても「青少年健全育成条例違反」になるので注意が必要です。
この記事では、未成年と援助交際したら「同意があっても罪になる」理由と、成立する犯罪について解説します。
このコラムの目次
1.援助交際で同意があっても犯罪になる理由
一般に「性犯罪」というと、強制わいせつや強姦(強制性交)などのイメージも強く、「同意があれば罪にならない」と思われているケースが多々あります。
確かに相手が成人していれば、双方に同意がある限り「自由恋愛」の範囲であり犯罪になりません。
相手が既婚者でも、民事的な損害賠償義務は発生しますが刑事的な処罰はありません。
しかし、相手が未成年の場合、たとえ同意があっても犯罪が成立します。
未成年は判断能力が未熟で、自分で自分を守るための適切な判断ができないからです。
未成年者との性的な行為を認めると、未成年者が悪い大人の「食いもの」にされてしまうおそれも高くなります。
そこで法律は、未成年を性的な行為から遠ざけて保護するためのさまざまな規定を用意しています。
2.未成年と援助交際したときに成立する犯罪
未成年と援助交際をしたとき、同意があっても成立する犯罪をみていきましょう。
(1) 児童買春罪
未成年と援助交際をすると、多くのケースで「児童買春罪」となります。
児童買春罪は、18歳以下の未成年に対価を渡して性交渉や性交類似行為をしたときに成立する犯罪です。
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)」第4条に規定されています。
第4条
児童買春をした者は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処する。
児童買春の成立要件を、もう少し詳しくみていきます。
相手が18歳未満
児童買春罪における「児童」は、18歳以下の未成年者です。男女は問いません。
援助交際の相手が18歳未満であれば児童買春罪が成立する可能性があります。
金品などの対価を渡した
「買春」とは、対価を渡して性行為や性交類似行為を行うことです。そこで、児童買春罪が成立するには何らかの対価を渡すことが必要です。
現金だけではなくプレゼントを渡したり、高額な食事をごちそうしたり、デート代を全額負担したりする場合にも対価性が認められます。
性交あるいは性交類似行為をした
「買春」というためには「性交や性交類似行為」をしたことが要件となります。男女の性交渉だけではなくそれに類似する行為も規制対象になります。
上記のように、「児童買春」成立の要件として「同意がないこと」は含まれていません。
対価を渡して18歳以下の未成年者と体の関係をもったら、それだけで児童買春罪になります。
(2) 青少年健全育成条例違反(淫行条例違反)
同意がなくても児童買春罪になるなら、「お金を渡さなければ良いのではないか?」と思う方もいるかもしれません。
対価も渡さず同意があれば、完全に相手の任意で関係を持つのですから、問題がないのでしょうか?
その場合、児童買春罪は成立しませんが別の犯罪が成立するので注意が必要です。
それは「青少年健全育成条例違反(淫行条例違反)」です。
全国の都道府県は、それぞれ「青少年健全育成条例」を定めています。
青少年健全育成条例とは、地域の青少年が健全に成長して大人になっていけるように、未成年を有害な図書や行為から守るための条例です。
埼玉県でも、以下のような規定が設けられています。
(淫らな性行為等の禁止)
第19条 何人も、青少年に対し、淫らな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
青少年健全育成条例にいう「青少年」とは18歳未満の未成年のことであり(第3条1項)、児童買春禁止法における「児童」と同じ意味です。
そして条例は「青少年に対する性行為やわいせつ行為」を禁止しています。ここでは対価性も要求されていませんし、同意の有無も問われていません。
つまり、18歳未満の未成年相手に何らかのわいせつ行為を行ったら、それだけで「青少年健全育成条例違反」になるのです。
青少年健全育成条例違反には「刑事罰」も用意されています。埼玉県の場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金刑です。
(3) 強制性交等罪・強制わいせつ罪
強制性交等罪は、かつての強姦罪です。
13歳以上の人が相手の場合には「暴行脅迫」を用いて無理に性行為などを行った場合に成立しますが、相手が13歳未満の場合には「同意があっても」強制性交等罪となります。
強制わいせつ罪も同様で、相手が13歳未満の場合には暴行や脅迫をせず、たとえ相手が望んだとしても、わいせつ行為をしただけで「強制わいせつ罪」となります。
これらの罪に与えられる刑罰は大変重く、たとえば強制性交等罪が成立したら初犯でも基本的に実刑になります。
未成年者と援助交際するとき、相手と会ってみたら思ったよりずいぶん子どもっぽいと感じるケースがあるものです。
そのようなとき、相手が同意しているからといって性行為やわいせつな行為を行うと、このような「強制性交等罪」や「強制わいせつ罪」が成立する可能性があり、注意が必要です。
相手の年齢が幼そうに見える場合、絶対に行為に及んではなりません。
(4) 児童ポルノ禁止法違反
援助交際から派生する罪として「児童ポルノ禁止法違反」があります。児童ポルノ禁止法は児童買春・児童ポルノ禁止法と同じ法律ですが、「児童ポルノ」の作成や頒布、所持などの行為を禁止しています。
児童ポルノとは、児童に関するわいせつな姿態を撮影した写真(画像)やビデオ(動画)です。援助交際した相手との性交渉の場面などを撮影したら「児童ポルノ製造罪」になりますし、そうした写真や動画を所持しているだけで「児童ポルノ所持罪」となります。さらにネットなどに公表すると「児童ポルノ頒布罪」となります。
これらの児童ポルノに関する罪は、すべて「相手の同意がないこと」を要件としません。相手が撮影に協力したり「投稿してもいいよ」と言っていたりしていても、犯罪になります。
以上のように、18歳以下の未成年と援助交際をしたら、相手の同意があってもさまざまな罪が成立します。
相手が「少しでも18歳以下の可能性がある」なら、絶対に性行為やその他のわいせつ行為をしてはなりません。
3.援助交際で逮捕されたときに発生するリスク
援助交際をして児童買春罪などで逮捕されたら、以下のようなリスクが発生します。
(1) 前科がつく
逮捕後、捜査が進んだら起訴されて有罪判決が出るでしょう。
そうなったら、たとえ罰金や執行猶予付き判決であっても前科がつきます。
性犯罪の前科があると、その後の人生に多くの悪影響が及ぶことが予想されます。
例えば、就職の際の履歴書の賞罰欄に前科を記載しなければならなくなり就職が困難になることが予想されますし、一定期間つけなくなる職業もあります。現在就職されている方の場合は、解雇される危険もあります。
また、海外旅行の際も入国に特別な手続きを要求されたり、入国を拒否される場合もあります。
もし、再び刑事裁判を受けることになった場合には判決も重くなります。
(2) 会社に出社できなくなる(解雇の可能性)
逮捕されると、しばらくは会社に出社できません。特に児童買春罪の場合、勾留される可能性が高いので最長23日間は留置場に入ったままになります。
そうなったら長期にわたって出社できず、解雇の危険性も高まります。
(3) 家族に迷惑をかける
児童買春していたことを家族に知られたら、妻から離婚を申し渡される可能性がありますし、子どもからも軽蔑されるでしょう。
もし許してくれたとしても、今度は家族が周囲から偏見を持たれて苦しむことになってしまうおそれがあります。
(4) 周囲の人間関係が壊れる
友人や親戚などに援助交際のことを知られると、多くが遠ざかってしまうかもしれません。
犯罪行為は人間関係をも壊してしまいます。
4.児童買春罪で逮捕されたらすぐに弁護士までご相談を
もしも児童買春罪で逮捕されたなら、一刻も早く弁護士へご相談下さい。
弁護士が被害者へ連絡を入れて「示談」を成立させることができれば、処分を軽くしてもらいやすいです。
児童買春罪の場合、不起訴になる可能性は低いものの、示談を成立させることにより、略式裁判で罰金刑にしてもらえる可能性はゼロではありません。
青少年健全育成条例違反の場合には、示談によって不起訴にしてもらえる可能性もあります。
援助交際の事案で示談を成立させるには、自分の子どもにわいせつ行為をされたと知って強く怒っている親と交渉しなければなりません。性犯罪に慣れた弁護士でないと対応は困難です。
「相手の同意があれば良い」などと軽い気持ちで援助交際をすると、大変なことになります。
万一逮捕されたなら、今すぐに弁護士までご相談下さい。
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