刑事事件

強制性交等罪とは?逮捕されてしまった場合にするべきこと

2017年に、強姦罪は強制性交等罪として改正されました。名称の変更だけでなく、内容にいくつかの変更があり、厳罰化されています。

実際に罪を犯してしまったという方や、ご家族が逮捕された方にとっては、今後の展開かどうなるのか不安になるでしょう。

そこで、今回は強制性交等罪の刑罰や旧強姦罪との違いから、逮捕された後の流れ、示談の重要性までを解説します。

1.強制性交等罪と旧強姦罪との違い

まずは、強制性交等罪の基本的な内容と、旧強姦罪からどのような変更があったのかを見ていきましょう。

(1) 強制性交等罪の刑罰

強制性交等罪(刑法177条)とは、一般的にいわれるレイプ行為を指しますが、性交のみではなく、肛門性交又は口腔性交も含まれます(これら各行為を含めて「性交等」と規定しています)。

13歳以上の者に対しては同意なく暴行や脅迫により性交等を行った場合に同罪が成立します。13歳未満の者に対しては暴行・脅迫がなく、同意があっても同罪が成立します。

刑罰としては「5年以上の有期懲役」が科されており、罰金がないため非常に重い罪となっています。
これは強制性交等という行為が、性的自己決定権という被害者の重要な権利を侵害する行為であると考えられた結果です。

(2) 旧強姦罪から強制性交等罪への主な変更点

2017年の刑法改正は100年以上ぶりの改正であり、大きな注目を集めました。

このとき、旧強姦罪から強制性交等罪へと名称変更が行われたのですが、名称以外にも大きな内容変更がありました。
具体的な改正点としては以下の通りです。

《主な改正点》

  • 3年以上の懲役→5年以上の懲役
  • 対象(被害者)は女性→性別不問
  • 性交を処罰→肛門性交や口腔性交も処罰
  • 起訴には告訴が必要→告訴なしで起訴可能
  • 監護者わいせつ罪、監護者性交等罪が新設

まず、刑罰が3年以上から5年以上に引き上げられたのは大きなポイントです。懲役の下限が変更されたため、厳罰化となりました。

また、従来は性交のみを処罰していましたが、性交類似行為も性交と同様に被害者の性的自己決定権を侵害する行為であることはには変わりがないため、同罪の処罰の対象となります。また、これに伴い、男性も被害者の対象となりました。

さらに、これまでは被害者の心情や意思を考慮し、告訴がある場合に起訴が可能となっていました。しかし、告訴するか否かの選択を被害者に委ねることは、かえって被害者の精神的な負担を増してしまうことなどから、改正後は告訴なしでも起訴が可能となったのです。

これに加えて、両親や子どもを監護する人が監護する18歳未満の子どもに強制性交等やわいせつ行為を行った場合に罰することができる刑罰として、監護者わいせつ罪、監護者性交等罪が新設されました。

2.強制性交等罪で逮捕された後の流れ 

次に、強制性交等罪で逮捕された後の流れと勾留や起訴、前科の可能性についてご説明します。

(1) 強制性交等罪で逮捕された後の流れ

強制性交等罪で逮捕されたら、以下のような流れで逮捕後の手続きが進んでいきます。

  • 逮捕後、警察署にて取り調べ
  • 逮捕後48時間以内に検察に送致
  • 検察にて送致から24時間以内かつ逮捕から72時間以内に勾留請求するか否かを決定。
    勾留請求を受けた裁判官による勾留質問を経て勾留決定。検察官が勾留請求しない場合や、裁判官が勾留請求を却下した場合は釈放
  • 勾留決定後は原則10日間、延長があれば更に10日間勾留
    →勾留中に起訴・不起訴決定(不起訴なら釈放)
  • 起訴された場合は、勾留は自動的に被告人勾留として継続される
  • 起訴後1ヶ月から1ヶ月半程度で裁判が行われる
  • 裁判にて、無罪、有罪が言い渡される
    →有罪の場合は執行猶予判決か懲役刑となる

逮捕から勾留請求までは最大で72時間身体拘束されることになります。勾留決定されれば、逮捕から勾留に切り替わりますが、逮捕の間は家族と面会することはできません。

弁護士との接見は可能ですので、この間に弁護士に依頼することをおすすめしています。

また、勾留が決まると、最大で20日家に帰ることはできません。起訴が決まるとほぼ確実に有罪となるため、不起訴を目指して弁護活動を行う必要があります。

(2) 勾留と釈放の可能性

強制性交等罪はかなり重い罪ですが、必ず勾留されるとは言い切れません。場合によっては釈放もありえます。

勾留を免れるためには、被害者との示談の成立が極めて重要となります。

示談をする際には、被害者に対し、誠心誠意謝罪をしたうえで、生じてしまった損害についての金銭賠償を提案します。ご自身での示談交渉は難しいため、弁護士が間に入り示談交渉を行うのが一般的です。

謝罪と反省の意を見せ、適切な賠償を行えば示談に応じてくれるケースもあります。

また、勾留に関しては、証拠隠滅や逃走のおそれの有無が勾留請求の際に判断されます。

厳罰化されたとはいえ、家族などの身元引受人がいることや十分な反省を行い示談成立があることなどを弁護士が説明することで、勾留を回避することができる可能性があります。

【逮捕されたら必ず起訴されて前科がつくのか?】
強制性交等罪で逮捕された場合、必ずしも起訴され前科がつくとは限りません。
確かに、強制性交等罪は重い犯罪です。そのため、起訴の可能性も高いといえますが、被害者との示談が成立している場合や起訴を望まない旨の被害者の嘆願書があれば起訴を免れる可能性もあります。不起訴となれば前科はつきません。
起訴されて有罪になったとしても、必ず収監されるわけではなく、執行猶予付き判決がでれば服役を回避することも可能です。もっとも、有罪となれば、執行猶予判決でも前科がついてしまいますので、弁護活動としては不起訴の獲得を第一に目指すことになります。

3.強制性交等罪における示談の重要性

強制性交等罪は重い犯罪です。そのため、より良い結果を獲得するためには示談成立が非常に重要です。

(1) 示談で前科を回避できる可能性が高まる

示談が成立すれば必ず不起訴となるわけではありません。というのも、先にご説明した通り、強制性交等罪では非親告罪となり、被害者の告訴なしでも起訴が可能となったためです。

しかし、示談に全く意味がないわけではありません。検察はこれまでと同様に被害者の処罰意思も考慮しているため、示談があればそれを考慮し起訴しない可能性も十分にあります。
したがって、示談が一番有効な手段といえるのです。

また、起訴されなければ前科がつくことはありません。

早期から弁護活動を開始すれば、被害者が示談に応じてくれる可能性は高まります。
仮に起訴された場合でも、実刑を回避するための弁護活動ができます。示談が成立すれば、その点を裁判官は良い情状として考慮するため、量刑に影響する可能性も高く、執行猶予の可能性も高まります。

(2) 示談成立には弁護士が必要

強制性交等罪で示談を成立させるためには、弁護士の協力が必須です。

多くの場合、性犯罪の被害者は加害者に対し強い被害感情を持っています。とりわけ、強制性交等罪は性犯罪の中でも重い罪であるため、被害者の被害感情は特に強いといえます。検察は起訴を検討する際に必ず被害者の処罰意思を確認しますが、被害者が示談に応じていない場合や処罰意思を確認できた場合には、起訴に踏み切るでしょう。

起訴を回避するためには、ご説明した通り、示談が有効な手段ですが、加害者や加害者家族からの直接の示談交渉は事実上不可能です。通常、性犯罪の被害者は加害者と面会したがらない・連絡をとりたがらないためです。

たとえ加害者の家族であっても同様です。無理やり連絡をとろうとすると、示談に応じさせるための脅迫と取られかねません。

そのため、弁護士を挟んで示談交渉を進める必要があるのです。弁護士であれば、示談交渉に応じてくれるケースも多いといえます。

被害者は加害者が想像するよりも精神的・肉体的に深刻な被害を受けていることが少なくありません。示談交渉による二次被害を防ぐためにも弁護士は被害者の気持ちに寄り添い示談交渉を進めます。できる限り丁寧な対応を行い、加害者の謝罪や反省の意を伝えていくのです。

賠償金に関しては、一括払いが原則です。賠償金は被害者の損害を回復するためのお金であり、分割払いの約束をしただけで実際に支払われるかどうかわからない段階では未だ損害が回復されていないので、被疑者に有利な事情として考慮できないからです。

もっとも、どうしてもまとまったお金がないケースもあるため、その場合は被疑者の両親や信頼できる上司など被疑者に対する今後の指導監督が期待できる身元引受人で、かつ、資力も十分ある者を連帯保証人としつつ、示談書を公正証書化するといった対応で支払いの確実性を保障しながら交渉をまとめることも検討に値します。

刑事事件の経験豊富な弁護士ならば、このようなノウハウを十分に蓄積しているのです。

示談交渉は被害者の意思に寄り添いながら、双方にとってより良い結果を目指すため、弁護士にお任せすることをおすすめします。

4.強制性交等罪で逮捕されたら弁護士に相談を

いきなりご家族が強制性交等罪で逮捕されたら、困惑されることでしょう。どう対応すれば良いのかわからず右往左往するのも無理はありません。

ご家族が刑事事件を犯してしまったら、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

刑事事件はスピードが勝負だといわれています。早くにご相談いただければ、起訴・不起訴決定までの示談交渉の時間も多くなるため、念入りな準備と共により良い結果を出せる可能性が大きくなります。
早期の示談交渉は、被害者の心証も良くなるでしょう。

泉総合法律事務所は、刑事事件を多く取り扱い、性犯罪事件も多数解決してまいりました。刑事事件でお悩みの方は、ぜひお早めに弁護士までご相談ください。

無料相談受付中! Tel: 0120-701-271 平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:30
0120-701-271
平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:30
メールでお問い合わせ