刑事事件

盗撮事件で再犯の場合、罪は重くなる?

盗撮事件を起こしてしまうと、影響が出るのは自分だけではありません。職場(仕事)や家族にも影響が出てしまうことがあります。

特に再犯となると、罪が重くなる可能性もあり、できるだけ早い段階で弁護活動を始める必要があります。
もし盗撮で再度捕まってしまった場合は、弁護士にご相談することをおすすめします。

今回は、盗撮の罪、犯罪の特徴、再犯の場合に罪が重くなるのか、などについて解説します。

1.盗撮は再犯率が高い犯罪

(1) 性犯罪の再犯率は3割程度

盗撮の再犯率は高いという話を聞いたことはありますか?

法務省の統計である犯罪白書によると、刑法犯全体の再犯率は、平成30年度で約40%でした。盗撮単体での再犯率は明記されていませんが、同年の性犯罪の再犯率は26-27%程という結果が出ています。

平成26年度のものでは、36%という結果が出ているため、性犯罪では2-4割は再犯行為に及んでしまうという実態があるようです。

ただ、全体の再犯率に比べると、性犯罪の再犯率は多いとはいえません。実際のところ、恐喝や強盗などの暴力事件の方が再犯率は高くなっています。

もっとも、2-4割の再犯率はあなどれません。
盗撮に関しては、この統計以外の根拠からも再犯率が高いといわれる理由があります。

(2) 盗撮を繰り返してしまう心理

見つかれば処罰されるのがわかっていても盗撮を繰り返してしまうのには、心理的な問題が影響しています。
具体的には、以下のような理由から盗撮がやめられなくなってしまうのです。

  • 実行時のスリルや達成感などが魅力に思えてやめられない
  • ストレス発散ができた気になる
  • 女性に対する認知の歪み(嫌がられていないという誤認)

盗撮は歪んだ性欲が理由だとイメージされる方は多いでしょう。

しかし、実際には性欲だけが理由ではなく「ゲーム感覚」を楽しんでいるケースもあります。犯罪を犯しているのに捕まらないスリルが病みつきになってしまうのです。

これ以外にも、ストレスのはけ口として盗撮行為で発散してしまうケースがあります。
女性が「喜んでいる」と考え、盗撮行為に走ってしまうケースもあり、この場合は女性に対する認知が歪んでしまっています。

このように、盗撮行為は心理的理由も絡み、再犯に走りやすい犯罪といわれています。

2.盗撮行為の罪名・罰則

次に、盗撮行為を行ってしまった場合の罪名・罰則についてご説明します。

(1) 埼玉県迷惑行為防止条例違反

6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金

盗撮行為は「盗撮罪」として処罰されることはありません。いくつかの罪名には触れますが、実は盗撮のみを対象とした犯罪はないのです。

盗撮で捕まった場合、一番よくあるのは「迷惑行為防止条例違反」で検挙される事例です。
迷惑防止条例は各都道府県が規定するもので、公共の安全を守るために制定された法律です。

埼玉県では、同法2条4項にて以下のように盗撮行為を規制しています。

何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人に対し、身体に直接若しくは衣服の上から触れ、衣服で隠されている下着等を無断で撮影する等人を著し羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。

この条例では、電車やバス、駅、店舗などでの公共の場所での盗撮行為を想定しています。
この法律により捕まった場合は「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金(12条2項)」が科せられる可能性があります。

常習の場合には、「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」に処されるため、罪が重くなります。常習かどうかは前科前歴の有無も関係しますが、それ以外の事情も加味して判断されますので、発覚したのが初めてでも常習として処罰される可能性はありえます。

(2) 軽犯罪法

拘留又は科料

盗撮行為は軽犯罪法によっても処罰される可能性があります。
軽犯罪法では、1条23項にて以下のように記載されています。

正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者”は“拘留又は科料に処する

条文をみてわかるように、公共の場所以外での盗撮行為を規制しています。

他人の家のお風呂を覗いたようなケースが一般的です。社内のトイレなどを盗撮したケースも軽犯罪法に寄って処罰されます。これらの場所は不特定多数の人が出入りすることを想定していないので、「公共の場所」にはあたりません。

罰則に関しては「拘留又は科料」が規定されていますが、拘留は1日以上30日未満の身体拘束を指し、科料は1000円から1万円未満の支払いが必要となります。それぞれ禁固刑や罰金刑の小型版のような刑罰です。

迷惑行為防止条例に比べると、随分と軽くなりますが、基本的には迷惑防止条例に当てはまるかどうかを判断した後に軽犯罪法で処罰できるかを判断します。

(3) 住居侵入罪

3年以下の懲役又は10万円以下の罰金

盗撮行為は、ビルや他人の家などで行われることがあります。

この場合、覗きのために(建物の管理者の意向に反して)他人の管理する建物に侵入していると考えることができるため、住居(建造物)侵入罪が別途成立する可能性があります。これは、建物が店舗や公共施設等の不特定多数の人が出入りする「公共の場所」であっても同様です。

刑法130条では、住居侵入罪に関しては以下のように規定しています。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

盗撮行為という犯罪を行うために住居侵入という罪を犯した場合には、それぞれ別に刑が科されるのではなく、牽連犯として処罰されます。

この場合、重い犯罪となる住居侵入罪の罪が適用されるため、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が適用される可能性があります。

このように、盗撮はさまざまな罪名に触れる犯罪です。軽い気持ちで行ってしまうと大変なことになります。

3.再犯の場合の量刑と執行猶予

次に、盗撮の再犯の場合の量刑は重くなるのか、執行猶予が付く可能性があるのか、についてご説明します。

(1) 再犯加重(刑法第57条)

刑法には、再犯加重というシステムが規定されています。一度罪を犯し処罰されてから間がないのに再度罪を犯した者は、反省していないと考えられるため、再度の犯罪防止の趣旨から刑罰が重くなる可能性を明記しています(刑法第57条)。

具体的には以下のような記載です。

再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする

例えば、住居侵入罪なら「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が規定されていますが、この2倍である「6年以下の懲役」が上限とされてしまうのです。
刑の下限はそのままですが、上限が大きくなるため、また再犯は初犯より悪質であると評価されるため、必然的に量刑も重くなる可能性が高くなります。

また再犯の定義については、「懲役に処せられた者が」刑期満了後あるいは懲役の執行の免除のあった日の翌日から5年以内に犯罪を行い、有期懲役に処されることを指します。

前に受けた刑が罰金であった場合には再犯の規定は適用されませんが、同種の罪を繰り返した場合には、通常はより重い懲役刑が科せられることになるでしょう。一方で前に懲役刑を受けたことがあっても、新たに犯した罪が軽微であり前科を考慮しても懲役を科すことが過剰であるという場合には、罰金刑が科され再犯の規定が適用されないこともあり得ます。

異種前科(前に処罰されたのが別種の犯罪だった)の場合でも、懲役刑の選択が重なれば再犯となります。

(2) 実刑の可能性と執行猶予の余地

「再犯になると刑罰の上限があがる」と聞くと、実刑が確実のように感じるかもしれません。

しかし、実際には、必ず実刑が課されるということはありません。再犯の場合でも、執行猶予が付されている人はいます。

特に、「最終的に言い渡される罪が1年以下の懲役・禁錮であり、酌量情状が認められ、前刑で付されたのが保護観察付きの執行猶予ではなかった」ケースでは前回懲役刑を受けた際に一度執行猶予にされていた場合でも、再度の執行猶予の可能性があります。

もっとも、実刑の可能性が高くなるケースがあるのも事実です。

  • 盗撮の常習犯であることが明らかになった
  • 3回以上盗撮での逮捕歴がある
  • 相当数の余罪がある
  • 執行猶予中の再犯の場合
  • 執行猶予満了直後の再犯

上記のようなケースでは、再犯として実刑の可能性が高くなります。

たとえば、スマホに盗撮のデータが大量に見つかった場合、相当数の余罪があるとされるか、常習犯として認定される可能性は高くなります。
何度も逮捕され、その度に微罪処分等で刑事処罰を受けなかった場合でも回数が増えれば、起訴の可能性は高くなるのです。

執行猶予中の再犯は特に実刑となる可能性は高くなるでしょう。前に犯した犯罪の執行猶予は取り消され、今回の犯罪の刑罰と合わせて実刑となってしまいます。

また、執行猶予満了直後の犯行でも実刑の可能性はあります。再犯の場合は、執行猶予を期待するためには前回の執行猶予が終わった段階から最低でも5年以上経過していることが必要と考えておくと良いでしょう。

もちろん、示談の成立その他有利な情状が存在すれば例外はありえますが、そうした有利な要素を的確に裁判所に評価してもらうためには、刑事訴訟の経験が十分な弁護士の助力が必要なことが多いでしょう。

4.大宮で盗撮事件を起こしてしまったら、弁護士へご相談を

盗撮事件を起こしてしまうと、最悪の場合懲役刑が科される可能性もあります。
初犯であれば、不起訴や罰金刑の可能性も十分にありますが、再犯となると実刑の可能性はかなり高くなります。

逮捕された場合にはできればすぐに、遅くとも3日以内に弁護活動を始めるべきです。

さいたま市、埼玉北部地域、埼京線・高崎線・宇都宮線・京浜東北線沿線にお住まい、お勤めの方で盗撮事件を起こしてしまった方、そのご家族の方は、泉総合法律事務所大宮支店へご連絡ください。弁護士が精力的にサポートいたします。

無料相談受付中! Tel: 0120-701-271 平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:30
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